ゲーオタのためのロマン主義講義(FF2の構造分析) [4]

Posted by yatsu Mon, 02 Oct 2006 01:25:21 GMT

「ロマン主義」という言葉は日常的にはなかなか通じません。 うっかり口にしてしまうと、特定の社会状況を自分の興味分野にこじつけておもしろがっているだけとしか見てもらえません。 なにがロマン主義なのか、ロマン主義というものが歴史的にどのような意味、構造、対立をもっていたのかを意識すれば、ネット上などで見られる不毛な対立も意義あるものにできるのに、と感じることがあるのですが、それはまた今度書きましょう。

今回はFF2のエンディングについて書く予定でしたが、「ウボァー」について書くと予告してしまっていたので、今回は皇帝に死んでもらうことにします。

第4回講義 – ウボァーとイロニー

まず、みんな大好きな「ウボァー」を復習しておきましょう。

この私がやられるとは・・・
信じられ・・・ん・・・2度までも・・・お前に・・・
お前はいった・・い な・・にもの?
ウボァー
(参考: FF2攻略日記: ウボァー)

前々回の註(*1)で、「ウボァー」もロマン主義と解釈できると書きました。 そんなバカな! ネタ狙いすぎ! と思われてもしかたないですが、まぁ聞いてください。

「ウボァー」はなぜウケたのでしょうか。 ウボァーとは - はてなダイアリーから引用します。

皇帝自体が美形キャラであることと、あまりにもそれまでのセリフを覆すような断末魔だった為に話題となった。

これはロマン主義の重要概念「イロニー」なのです。広辞苑「アイロニー」から引用します。

アイロニー【irony】
(偽装の意のギリシア語から)
(1) 皮肉。あてこすり。反語。
(2)〔哲〕ソクラテスの用いた問答法。議論の相手を知者とし、自己は無知を装いながら、対話を通じて相手の無知をあばいた。
(3)〔美〕F.vonシュレーゲルを中心とするドイツ-ロマン派の用語。一方で対象に没入しつつ、他方でそれに距離をとって皮肉に見ることにより、自我をあらゆる制約から解放する態度をロマン的イロニーと呼んだ。イロニー。(*1)

美形悪役というわかりやすい形に没入させておきながら、最後に「ウボァー」という奇声によってそれまでの形を打ち砕く。 これによってロマン主義的自我が開放されるのです。

イロニーもまた、第2回で述べたロマン主義の根本原則から説明できます。 ロマン主義は自分を縛るものとしての規範を嫌うだけでなく、自ら構築するものに対しても、規範に収められないものを求めるのです。

しかし、このような解釈を知ってしまうと、「なにコイツ、ウボァーだってwww」みたいに純粋に楽しめなくなってしまいますね。 「おれたちはいろんな事を知りすぎた」のです。 おっと先走ってしまいました。 レオンハルトのこのセリフについては次回解説します。


(*1)

シュレーゲルほどわかりやすいロマン主義はなかなかないので、いくつか紹介しておきます。

われわれは、われわれ自身の愛を越えて高まり、われわれが崇拝するものを思考のなかで破壊することができなければならない。 さもなければわれわれには、他のいかなる能力が具わっていようとも、宇宙万有を理解する器官[感覚]が欠けていることになる。

そのようなわけで、われわれは、詩人の魔術にみずから進んで魅了されたあとで、この魔術から進んで身を振りほどきたいと思うのだし、そして一番やりたいことは、詩人がわれわれの目から遠ざけようとしたもの、もしくはすぐには見せようとしなかったものを、また、詩人を芸術家たらしめるのにたしかに最も大きく与っているもの、つまり詩人が密かに追求しているさまざまな秘密の意図を、探り出すことなのである。

これと同じ程度に、神の手に成るもののごとく素晴らしい作品[作物]を規範通りに価値判断するような芸術評価に対する反感も、呼び起こされる。 最も繊細で最も選り抜きの機知の饗宴を、誰が、種種さまざまの杓子定規な規則や慣例的なくだくだしい手順でもって、批評したいと思うだろうか? 『マイスター』についての、世に言うところの批評は、われわれにはつねに、本を小脇にはさんで森へ散歩にやってきて、フィリーネに郭公の歌で追い払われる青年のように見えることだろう。

教養ある者はだれでも、自分自身をはるかに越えて高められるその一方で、そこにただ自分自身だけを再び見つけ出すように思うのだ。 つまり偉大さとは、こうでなければならないかのような姿でのみ存在していながら、それにもかかわらず、われわれが要求してもよいよりもはるかに大いなるものである、ということにほかならない。

上記すべてフリードリヒ・シュレーゲル「ゲーテの『マイスター』について」(ヴァルター・ベンヤミン『ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念』に参考資料として所載)より。

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